『人種主義の政治:第二次世界大戦中の日系カナダ人の追放』(アン・ゴマー・スナハラ 著)は、1942年の日系人強制立ち退き命令の背後にあった政治的駆け引きを十分に記録した初めての書籍です。ブリティッシュ・コロンビア州に居住していた2万人の日系カナダ人は強制的に立ち退きを命じられ、内陸部の労働キャンプや収容所、アルバータ州やマニトバ州の農場へと送られました。本書では、人種差別と政治家の便宜主義との関係性が詳細に描かれ、マイノリティを犠牲にして権力に縋りつこうとする少数の政治家がいかに国家の政務や政党を操っていたかが示されています。そのなかで最も恐ろしいことは、政治家が非常に冷笑的かつ計算された方法で、人々の不安や戦時下での異常な興奮状態を利用し、カナダ人がいかにたやすくそれに操られてしまったかということです。

『人種主義の政治』1981年版(POR1981)の出版以降、二度改訂版が出版されました。2000年のHTML版(POR2000)では補償問題(リドレス)についてのあとがきが追加され、こちらで閲覧可能です。また電子書籍版(POR2020)には、著者による写真エッセイが追加されています。

このWEBページの日本語翻訳は、大木崇氏監修です。


写真エッセイ付 2020年版

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アン・スナハラは、歴史家であり弁護士でもあります。1973年に歴史の研究を始めましたが、その目的は、夫のデービッドが第二次大戦中に何故カナダの収容所で生まれることになったのかを調べることでした。

その研究をもとに1981年に出版された本書『人種主義の政治:第二次世界大戦中の日系カナダ人の追放』では、役人たちが政治目的でいかに日系カナダ人の人権や市民としての権利を侵害したかを、政府自身の文書を用いて示しました。本書に書かれた事実は、戦時中に行われた不正に対して補償を求める日系カナダ人のリドレス運動の始動を促し、またこの研究をきっかけにスナハラは法律、特に日系人の権利が侵害されることになった戦時措置法(War Measures Act)を研究することになりました。

リドレス運動が行われている間スナハラは、多くの集会や会議で講演し、全カナダ日系人協会(NAJC)のために資料や訴訟事件摘要書を書きました。また、緊急事態法(Emergencies Act)に関するNAJCの委員会では共同議長を務めました。緊急事態法は、1988年7月に戦時措置法が廃止され新しく制定された法令で、リドレス運動の主要な要求を満たすものでした。

1988年に補償問題が合意に達した後は、補償金支払い手続きにまつわる係争に関して国務長官の諮問を受ける閣僚会議に、NAJCの代表として参加しました。1990年には、カナダ司法省に入省しました。2007年1月に定年退職した後は、様々な件でNAJCを支援しています。オタワのカナダ戦争博物館(Canadian War Museum)の第二次世界大戦ギャラリー内の日系カナダ人に関する展示では、抜けや誤りの訂正を行いました。

写真:アン・スナハラと夫のデービッド(アラン・ディーン・フォトグラフィ、オタワ)

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このウェブサイトは、日系カナダ人の強制収容と1988年の補償問題合意についての参考図書のひとつとしてお使いください。japanesecanadianhistory.netは、先生方や学生の皆さんの参考資料として作成されました。